パリのリトグラフ工房IDEM(イデム)。

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David Douglas Duncan - ピカソの証人 -

今日のブログはいつもと違う書き方をしようと思います。

今日は2月23日。
今は午後8時25分。
セーヌ川沿いでノートルダム寺院とエッフェル塔を見ながら書いています。

どうしてって、、、
たった今とても素敵な出会いをしてきたからです。
そしてそれは、きっともう再会することのない人との出会いでした。
この今の想いを伝えたくて、今ここでブログを書いています。


彼の名前はDavid Douglas Duncan。
もともと戦場カメラマンとして名を馳せていた彼。
そしてピカソに唯一近づくことを許されたカメラマンであり、ピカソを追って写真を撮り続けたことで有名です。
そして今日は彼の写真の展覧会のオープニングでした。

家とは逆方向の展示会場であるギャラリーBasia Embiricosに、時差ぼけと疲れの残る身体は行くことを拒否。
でも、ピカソと共に人生を歩んできた人に会いたくて身体を頭が説得。
どうにか辿り着いた場所。
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photo:Basia Embiricosギャラリー

御年96歳。
ピカソよりも35才若かったことになります。
彼はピカソの情熱と、まさに天性の才能をカメラに収め続けました。
e0246645_23321553.jpge0246645_23323414.jpgphoto:© David Douglas Duncan 2012 © Succession Picasso 2012

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photo:展覧会様子
この日は分厚い図録の発売記念も兼ね、多くの人がサインを求め買った本を手に彼の元に集まっていました。
私も展覧会の素敵さについつい購入。
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せっかくだしなーと思いながら私もサインを求めて彼の元へ行きました。

一人一人に丁寧にサインをするDavidさん。
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"あれは書道だね"と周りがいうほど集中して描かれ、既にお疲れのようでした。
少しイライラもされているよう。
"あと一人"と言われ半ばあきらめました。

いいの。だってサインをもらいにきたんじゃないもの。

と、、、思ったらその瞬間目が合い、彼が"ニヤッ"としました。
私はつられて"にこーっ"と。
その瞬間、指で”その本を貸しなさい"と合図するDavidさん。
ほんの数秒前まであきらめていた私は、まるでこうなることが分かっていたかのような気持ちになっていました。
彼は私の名前を尋ねると、"AKIKOという名前なのか!"と少し驚き、それまでのしかめっ面が何だか笑顔。
その驚きがなんだったのかは分からないけど、終始笑顔でサインをするDavidさんを見ながら私もずーっとニコニコしていました。

彼がサインを書いてくれている間、ずーっとわくわくしていたのは、握手をするのが楽しみだったから。
不思議なことにサインの後誰も彼に握手を求めないんですね。
Davidさんが少しお疲れだったからかな。
でも私は笑顔で握手をすると、彼と目が合った瞬間から決めていました。

これまでに、何回ピカソと握手をして、何度ピカソの肩を抱いただろう。
ピカソが亡くなった1973年4月8日、もし彼が泣いたのならきっとこの手がその涙をぬぐったのだと思います。
私はその手と握手がしたかったんです。

こんなことを言ったら、毎日私を迎えてくれる工房のプレス機たちに怒られてしまうかもしれないけど、ここでは当時の人の温度だけは触れることができません。
たくさんの歴史も、たくさんのパワーも想いも、今の人たちのとびきりの笑顔やたくさんのぬくもりはあるけれど、当時の人たちのぬくもりだけがここには足りません。
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photo:たくさんのピカソの作品を生んだプレス機と、石版たち

昔を繋ぐ今を、未来へと繋ぎたい。
この一年、たくさんのこと、ものを見て、たくさんのもの、人に触れてきました。
でも今日、Davidさんと握手をしたことで、過去の人の温かさもちゃんと受け取り、次に繋げられると感じました。

Davidさんの手は柔らかくて大きくて、とっても温かい手でした。
彼がこれまで手をつないできた多くの人たちと、私も手をつないだような気がしました。
そして彼は、"最後の一人"を撤回し、また次のサインを始めました。
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そして私はギャラリーをあとにしました。
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photo:ギャラリーのある通り

出会った人たちとはもう一度会いたい。
何度再会しても、また会いたい。
常にそう思っています。
でも今日初めて、再会を求めない、というよりも彼と共有する最初で最後のこのたった1、2分の間に、ありったけの気持ちを込めることの出来た、そんな出会いをしました。

たった今感じたこの想いをすぐに伝えたくて、今日はこんな場所で書いてみました。
こんな素敵な出会いがある。
やっぱりパリは、私にとってキラキラ輝く宝箱なんだなぁと改めて思いました。

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photo: この記事を書いた時のセーヌ川
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by idemparis | 2012-02-25 00:04 | 展覧会