パリのリトグラフ工房IDEM(イデム)。

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カテゴリ:展覧会( 17 )

ダリ / Salvador Dali

少しだけ前のお話。
今年の三月にポンピドドゥー美術館で開催されていたサルヴァドール・ダリの回顧展。

その感想を書きながら、最後にとっても嬉しい出来事があったことを綴っていきたいと思います。



"きっと彼にとって生まれ持った人生は最初、あまりに簡単だったんだろうなぁ"

そう思ったことが彼に興味を持ったきっかけでした。

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photo: ダリ代表作, 記憶の固執(La persistencia de la memoria)
1931年作ニューヨーク近代美術館(MoMA)蔵

観る人をその世界感に誘いながらも、はねのける程につるっとした表面と完璧すぎる程のディティール。
そして踏み込んでいいのか分からない彼の奇妙な世界観は、私に長らく親しみを感じさせてはくれませんでした。
以前MoMAで上の作品を観たときも、すごい作品だとは思うけどやっぱり全然惹かれず。
う〜ん...と思っていたんです。

それが、ポンピドゥーで開催された彼の回顧展で彼の人生全体を眺めることが出来たとき、その印象は大きく変わっていました。
展覧会に魅了されるままにカタログを買い、帰りのメトロはそれをうっとりと眺めながら帰りました。


サルヴァドール・ダリ、1904年生まれ。
両親ともにとても裕福な家庭の出身。
そんなおうちに生まれました。

そんな彼の持って生まれたその外見はあまりに美しく、俳優になったところで脇役にはなれそうにない主役級。

e0246645_2324222.jpge0246645_23242089.jpgphoto: ダリの若かりし頃、wikipediaより

美しい...。

お金があって容姿端麗、頭もよく、幼少から興味もあった美術の方向に進むも20才そこらで個展を開催。
本当は、誰もが望むような人生。

でもだからって、それで人生が満たされるとは限りません。
きっと賞賛を浴びることしかなかったダリ。
彼の生まれ持った人生は、きっとあまりに簡単で、彼にとって退屈なものだったんじゃないだろうかと感じました。

そんな彼が自分のたった一度の人生の表現の場所として選んだのがアートの世界。
それは彼の人生を飽かすことなく、最後までスリルを味あわせてくれる、そんな場所でした。



そうやって、思いっきり自分の人生に向かい合ったダリは、本当に素敵な人だったんだろうと思いました。
自分の可能性を存分に表現し、そして最後の最後まで一人の女性を愛し貫いた。
たとえそれが端から見ると奇妙な行動であったとしても、彼は存分に自分の人生を楽しんでいたと思っています。


と、そんな風にダリを好きになってしまったこの展覧会。
帰りの電車で眺めていたカタログには、こんな写真が載っていました。

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photo: ダリ、ムルロー工房にて(1956年)

ピカソやマチス、ミロやシャガールらその他多くの作家が信頼を寄せ、制作をしていたムルロー工房の石版やプレス機たちは、今も現役でここで動き続けています。

この写真を見て、きっとこのダリの使った石版だって今もここに並んでいるんだと思うと、今は亡き偉大な作家と、繋がった気がしました。

それから私は、いつもこの工房に並ぶ石版たちを、

”誰があのダリの石版なのー?”

と、一人でむふふと思いながら眺めています。
そんな私を、二億才くらい年上なこの石版たちは見守ってくれているんだろうなぁと。
だからここでは素敵なことか、とびきり素敵なことしか起こらないんだと思います。


今日も天井から差す日の光と、プレス機の廻るBGMがとても心地がいいです。
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by idemparis | 2013-06-28 00:14 | 展覧会

リンチ展開催の小さな物語、完結。

しばらく間は空いてしまいましたが、この小さな物語も完結。
前回のお話の続きです。

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photo:リンチ展@ヒカリエの様子(photo by Kenji Takahashi)

20年ぶりの再会だったというこのお二人
そう思うと、お二人が持つ空気って似ているような気がしています。

周りが見るその人の価値や地位や役割が変わろうと、たくさんの知識や経験を身につけようと、彼らの持つ好奇心に溢れた透明感のある眼はなんにも変わらないんだろうなと思うんです。
そしてその眼がどんどんと人を魅了し巻き込み、どんどんと自分の味方にしていってしまう。

今回、小山さんとお仕事ができることがとっても嬉しく、私とオーナーで何か出来ないかと考えていました。
"リンチさんのために何か出来たらいいな"と思ったように、"小山さんのために何か出来たらいいな"と思ったのは本当にお二人の共通する魅力に動かされて。

そこで出たのが小山登美夫ギャラリーに、そしてリンチの作品を見にわざわざ足を運んでくれるお客さまに向けてのビデオメッセージという案でした。
多忙なスケジュールの中快諾してくださったリンチさんとTeam Lynch、設営日が一日しかなく大忙しの小山ギャラリーのみなさん、そしてイデム。
時差もあるそれぞれが共通して持てた時間はたった半日。
その中で実現させるため、東京とロサンゼルスとパリが何だか一致団結していました。


そして出来たのがこの動画!!!
(びっくりしてください!)



わわわー。

まるでフィルムのようなメッセージ…。
感動です。
これを見たとき、小躍りしました...。

今回の展覧会開催をとっても喜んでくださったリンチさんの、その気持ちがたくさん籠ったビデオとなりました。
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photo:入ってすぐ右手の画面(photo by Kenji Takahashi)

こんな感じに会場内外で流して頂いたようです。
あぁ、しーあーわーせー。


そんなお二方の魅力に動かされた私ですが、今回のプロジェクトのもう一人の名脇役であるここのオーナーもそう言う意味ではお二人と同じ空気を持つ人。
知らず知らずに人を魅了し、人が集まってきます。
ここで働いているとその人徳と、人の輪の広さに驚かされるばかり。

そんな好奇心溢れ続ける透明感のある眼を持つ三人が集まったからこそ、こんなに嬉しく暖かく、きっと足を運ばれた方々にも楽しんでもらえただろう展覧会を実現させることができたんだと思います。

こんな若造が大先輩方を評するなとも言われそうですが、これは私の一感想で、この三人が本当に素敵な人たちなんだということを伝えたいと思う気持ちだとすれば、許されるかなぁなんて勝手に思っています。

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photo:そんな気持ちの私の今の視界...

これでこの小さな小さな物語も完結。


最後に残るは小さな悔しさ。
小山さん、ここのオーナーのフォレスト、リンチさんと誰が欠けても叶わなかったこの機会。
私もこのためにたくさんの仕事をしました。
本当はもっと前から実現したくていろいろ動いていました。
でも全然叶わず。
自分の非力さをただただ痛感した後に叶った展覧会でもあります。

だからこそ、この機会を作ってくださった小山さんに本当に感謝しています。
そんな小山さんも20年前はアシスタントでした。
だから私も今はまだ繋がっていないどこかにあるご縁が、今回のようなご縁に繋がっていくといいなぁと思いながら、マイペースに、そしていつも笑顔で、これからも一歩一歩進んでいければと思います。


この展覧会も大きな前進。
リンチさんに伝えた"今の夢"の一つが叶いました。
そして小山さん、リンチさんはもちろん、今回築けた小山登美夫ギャラリーのみなさんとチーム・リンチのみなさんとの関係も一つの宝物となりました。

そう思うと、あのヒカリエでの展覧会は会期中、私にとっての宝箱だった気がします。

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photo:宝箱!(photo by Kenji Takahashi)

おまけに、

展示されていた作品たちの制作風景...

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photo:« It was at Night when the Hands Reached Out and Gathered the Clouds from the Eyes and I Saw Myself », 2011製作中
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photo:« Why Electricity Make Me do Bad Things », 2012製作中


最後は少し長くなりましたが、リンチ展開催の小さな物語、


おわり。
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by idemparis | 2012-08-29 19:15 | 展覧会

リンチ展開催の小さな物語、つづき。

さて、
お話のつづき。

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photo:リンチ展@ヒカリエの様子2 (photo by Kenji Takahashi)

こういう時、ご縁って本当にすごいなぁと思います。

振り返って時は90年代。
東京青山に東高現代美術館というものがありました。
この美術館は、当時高級エステートを提案していた東高不動産が期間限定で設立したもの。

e0246645_20535371.jpge0246645_20541362.jpgphoto:1989年当時の様子(こちらから引用させて頂きました。)

開館は数年と短いものでしたが、その1988年から1991年の間にはフランク・ステラやダニエル・ビュラン、ソル・ルウィットにレンゾ・ピアノの個展など現在の日本で"こんなの見れるのー!"と驚くような企画が次々と開催されていました。
しかも会期が2週間から長いものでも1ヶ月半という...。

現在日本を代表する現代アートギャラリーの一つ、SCAI THE BATHHOUSEの代表、白石正美さんが副館長を務められ、多くの展示を企画されていたというだけでもかなりかなり興味深い...。
1991年8月、「不思議な抽象:現代アメリカの先鋭たち」という展覧会を最後に東高美術館は短い歴史に幕を下ろしましたが、それでも日本の美術史に刻んだ足跡は深く、今だに名前を聞くことも多い美術館です。

その中で1991年1月、たった2週間だけの会期でその"デヴィッド・リンチ展"は開催されました。
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photo:David Lynch展@東高現代美術館のカタログ(現在絶版ですがamazonで中古購入可)

今回のDavid Lynch展で、それ以来20年ぶりの展覧会と色んなところでうわさになっていたのでご存知の方も多いかもしれませんが、
その時、白石さんのアシスタントをされていたのが小山登美夫さんなんです。
今思うと、展覧会のキュレーターが飯田高誉さん、副館長が白石さん、アシスタントが小山さん...ご、豪華...。

時代は戻って2010年10月。
リトグラフ工房idemにはちょうどリンチさんが制作に来られていました。
同じタイミングでFIAC(パリで一番歴史のあるアートフェアー)に参加されていた小山さん。

"こんな工房があるんです。丁度リンチさんも来られていて。よかったら来られませんか?"

そう聞いてみました。


この半年前、人の紹介で初めてお会いした得体の知れない私の相談を、とっても楽しそうにじっくり聞いてくださった小山さん。
その人としての大きさに魅了され、いつかなにかご縁があれば嬉しいなと思っていました。
そしてその時の感謝もあり、いつか何かしらの恩返しが出来ればと思っていました。

そしてその時と同じように私の工房へのお誘いに、

"ぜひ!"

と快諾してくださり、お忙しい中お時間を作ってきてくださいました。
丁度idemで制作中だったリンチさんにここのオーナー、フォレストが小山さんをご紹介。

"1991年、東京の東高現代美術館での個展の際、Mr.白石のアシスタントをしていたんです。"

と小山さんがリンチさんに伝えると、


"Really? Oh, wonderful!! (本当?すごい!)"


と驚きつつもとっても喜ばれるリンチさん。


これが小山さんとDavid Lynch、20年ぶりの再会でした。



つづく...
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by idemparis | 2012-07-10 02:09 | 展覧会

リンチ展開催の小さな物語。

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photo:リンチ展@ヒカリエの様子(photo by Kenji Takahashi)

今日のブログは、かなり主観的な内容となっています。
私が持つDavid Lynchさんの印象や小山登美夫さんのイメージ。
そしてリトグラフに対する想い。

David Lynch展@ヒカリエの開催に至るまでに私個人の周りに起こったことです。
もしかしたらこれを読んでくださる皆さんのイメージや感想とは異なるところがあるかもしれません。

今回のお話を映画に例えると、David Lynchという主人公がいて、item editionsのオーナーや小山登美夫さんが名脇役として存在します。
私はその画面に1,2度見切るような存在でしょうか。
でもそこから見る小さな物語もなかなか味があるもの。
それを語りつつ、リンチさんの展覧会に関するお話に一旦区切りをつけようと思います。


2011. Nov in Paris...

私の働くリトグラフ工房IDEMにリンチさんが来られて既に5年目。
作品はすでに120点を超えていました。
ここのギャラリーItem Editionsでは、ロサンゼルスから着いたばかりの最新作を展示していました。

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photo:当時の展覧会様子

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photo:2011年オリジナル 最新作(*価格はお問い合わせ下さい)

この展示をリンチさんは奥様のEmilyと見にきてくださいました。
すっごく美人さんなんだけど、気取らずいつも笑顔なEmilyは美人と言うよりとってもかわいい人。
いつも私のネイルの色に興味津々。
そんな二人がゆっくりじっくり展示を楽しんでいます。

"This Bird Was Singing in The Tree and Then the Moon Come out...って読むの?素敵。"
と、Emilyが聞くと、

"そう、そう読むんだよ。"
と、とっても優しい笑顔でDavidが答えます。
本当に素敵なカップル。
そんな彼らのために何か出来たらいいなぁ。
彼らよりもずっと非力でまだまだ未熟者の私も、彼らが笑顔で居てくれたらいいなとそう思っていました。

こうやって周りの人たちを笑顔にしながら、きっと多くの人がこの人を笑顔にしようと動いてきたんだと思います。
David LYNCHってそんな不思議なパワーを持った人なんです。
彼がいろいろ成し遂げてきたのは、彼の持つパワーとそれに魅了されたたくさんの人たちのお陰だと思います。

そして展示をEmilyととっても幸せそうに、ゆっくりじっくり見た後、リンチさんはこう言ってくれました。

"Formidable!! 本当に素晴らしい展示!すっごく嬉しいよ。"

その言葉がとっても嬉しくて。
本当に嬉しくて、やっぱりこの人たちを笑顔に出来たら嬉しいなと、もう一度思いました。
だから私は勇気を持って言ってみたんです。

"あのね、私もこの作品たちが大好きなの。とっても美しいと思うの。だからいつかね、日本のリンチファンにも見せたいの。それが私の今の夢の一つなの。"

そしたらリンチさんはこう答えてくれました。


"Wondaful! Dream comes true! (夢は叶うよ)"



つづく...
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by idemparis | 2012-07-06 00:49 | 展覧会

David Lynch展@ヒカリエ 開催の裏側!! の続き

いよいよ始まります!
David Lynch展@ヒカリエ

昨日のお話でとうとう出来たDavid Lynchリトグラフ専用和紙!
そのお話の完結編です。

そんなこんなで出来た和紙

その違い、ドアップで見てみてください!!
2007年と2009年の作品は前の紙。
2012年の作品が今回新たに作った紙です。


どんっ。

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photo:2007年作品接写

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photo:2009年作品接写

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photo:2012年作品接写


…て、わかりにくい...。
分かりますか?違い...。
写真だと全然伝わらない。
か、かなしい…。涙

でも実物は驚くほどに違います。
オーナーも職人も、リンチさんご本人も大満足の結果が出るほど。
今までは出なかったところまで細かい表現が出ます。

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photo:職人と森木さんが以前の紙と特注の紙を比べているところ

というわけなので、よかったら実物を見に行ってください、ヒカリエ、リンチ展。
(すいません…涙)
職人さんの手でリトグラフのためにと想いを込めて作られた紙、本当に素敵なんです。
出来ることならパリの工房に来てその違いを見て、触ってほしい!
(注:ヒカリエでは触ることは出来ません。)

もちろん紙の好みは分かれるかもしれません。
もしかしたら今までの紙の方が好きな方もいらっしゃるかも。
2007年のタッチはダイナミックで、黒も強くパワフルさに溢れています。

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« Woman with Dream », 2007 courtesy Item Editions

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« Hello, Good Bye », 2007courtesy Item Editions
photo:パワフルさに溢れる2007年シリーズ

確かにそれらシリーズには以前の紙がマッチしているかとも思います。

でも今はリトグラフ職人が驚くほどに繊細なタッチで石版の上に描かれるリンチさんには、今回新しく作った紙は本当にぴったりです!
リンチさんの作品に合った紙を作って頂けたことは確か。

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« Sputnik Tower Building» courtesy Item Editions
photo:作った紙にプリントした2012年シリーズ


すごくすごくすごーくかなり嬉しいです。


そのリトグラフ専用の和紙を作ってくださる職人さんに行き着くことは、きっと簡単ではなかっただろうと思います。
この工房としてのオーナーの意見、そして職人の意見、そして何より作品とリンチさんのためにいい紙を!
申し訳ないほどにこちらからの注文も多く、恥ずかしいほどに和紙について無知な私は、色々と森木さん職人さんを困らせはしなかったかなと思っています。
この場を借りて改めてお礼をお伝えしたいと思います。


リンチさんの作風が好きな方、リトグラフに興味がある方、この和紙を見てみたい方。
どれか一つでも当てはまったらやっぱり足を運んでほしい。
この一ヶ月弱を逃したら、次はいつ日本で見てもらえるか分かりません。


将来の日本和紙を担うであろう和紙職人さん、和紙に対する想いは人一倍強い森木ご夫妻、リトグラフとこの工房を未来へ繋ぐここのオーナー、いつも笑顔で"Fantastic"と言うDavid Lynchさん、そして人生をリトグラフに懸ける工房の職人たち、リンチの世界を日本で見せたいとこの機会を作ってくださった小山登美夫さん始めギャラリーの方々。
たくさんの人の手を渡り、日本で生まれた和紙がパリでリトグラフとなり、今回日本に帰りました。
この機会にぜひ、これらの作品を手に取って頂ければ嬉しいです。

最後に、出来立ての和紙をパリまで持ってきてくださった森木ご夫妻とLynchさん。
丁度制作に来られていたリンチさんご本人もとっても喜んでくださいました。
こうやって人の輪が繋がり、いいものが生まれ、笑顔が生まれ、その笑顔がまた人を繋いでいければいいなと思います。

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photo:David Lynchさんと森木ペーパー森木ご夫妻




最近工房の様子をお伝えしていませんが、こんなカラフルなJean-Michel Alberolaの新作シリーズを作っているところです。
これは4月にリニューアルオープンし、ヨーロッパ最大の現代アート展示会場となったパレ・ド・トーキョー内にある会議室の壁シリーズです。
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photo:パレ・ド・トーキョー内会議室

お陰で工房がとってもカラフルになっています。

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photo:今日の工房の様子


あ、もちろんヒカリエの会期を逃されても、ここにはいつもDavid LYNCHリトグラフシリーズが全作品揃っています。
パリにお住まいの方、パリに来られる方はぜひ工房、ギャラリーに来てください。
お待ちしています◎
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by idemparis | 2012-06-27 01:54 | 展覧会

David Lynch展@ヒカリエ 開催の裏側!! の続き

さてさて今頃日本の梅雨の湿気具合にびっくりしているだろうリ
トグラフの和紙たち

お話の続きです。


偶然工房に眠っていた和紙。
これに印刷してみる?って、第一作目を印刷したのが始まり。

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photo:第一作目« Insect and Woman »courtesy Item Editions

"石の上に描く"という行為をとっても気に入ってくださったリンチさんに、オーナーは大きな石を出しました。

"もっと大きな石に自由に描いたらいいじゃないか。"

それがこの作品。
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photo:第二作目« Insect by House with Woman »courtesy Item Editions

そこからすでに5年。
この工房を第二のホームだと言ってくれるほど、ここをだーい好きでいてくれています。
そしてパリに来る度にたくさんの作品を描く。
数えればすでに150点を越えています。
いつしかリンチさんが来る度に大量の和紙を発注することとなっていました。


よりいい形でいいものを生み出したい。
そう考えるここのオーナー、パトリス・フォレストはその時はまだここで働いていなかった私に頼みました。


"日本から直接紙を頼めないだろうか。出来るなら職人に直接会って作ってほしい。"


それが2009年のこと。
どれだけの和紙会社のホームページを見たことか。
でも、うちのような需要はほとんどないのか、自力で見つけることは出来ず。
それでも時間がかかった末にようやく辿り着いたのが森木ペーパーさんでした。

"とっても信用の出来る方だから"

と紹介してくださったのは、同業者の方。
その言葉は、何よりも私の背中を押す言葉。

"森木さんにお願いしてみよう。"

そう思ったけど、その時はまだ、今のような関係が生まれるとは思っていませんでした。
そしてそこから3年がたった今、森木さんはこの工房にとってなくてはならない人となっています。

森木さんは1925年に創業された輸出を中心とした和紙の専門商社の三代目。
欧米を中心に現在25カ国で和紙を紹介されています。
リンチさんが和紙にプリントすることになったのは間違いなく森木さん、もしくは森木さんのお父さまのお陰なのです。
和紙への想いは人一倍強く、良心的で素晴らしいお仕事をされる心から信頼出来る方。

お付き合いをさせて頂いていた当初から、いつかリンチさんのリトグラフのために最も適した紙を作りたいと相談させて頂いていました。
それは決して簡単なことではなく、それから二年以上が経っていました。
そしてそして!!今年の二月、森木さんのお陰でやっとやっと職人さんに出会うことができたのです!
待ちに待ったこの機会。さっそく打ち合わせも兼ね、工房を見学させてもらいました。


工房では素材の違いや工程を教えて頂き、
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photo:材料の自家栽培もされているようで、刈り取った後でしたがこう言うものだと見せてもらいました。

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photo:和紙の材料となる楮など…

実際に作ってらっしゃる場面も見せてもらう。
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photo:紙をすいている風景

ふむふむ。

で......

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photo:出来立ての紙

出来立ての紙ってーーー!!
こんなにもふわっふわでキレイ!!
ひんやり赤ちゃんほっぺな石版と相性がいいのを感じるほど!!

そして一枚一枚丁寧に乾かされます。
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photo:乾かすのも全て手作業

職人の手仕事って共通するんですね。
仕事は違えど、うちのリトグラフ工房の仕事と重なります。

そして遂に遂に!!
David Lynchさんのリトグラフ専用の紙が出来上がりました!!!

と、言うところですいません、長くなったので次に続きます。
次回はその紙の違いをじーっくり見てもらいたいと思います!

ふ〜。
思い余ってか、今日はやけにテンションの高い記事となりました。
ヒカリエでの展示まであと二日。
一番わくわくしているのは私かもしれません。
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by idemparis | 2012-06-26 01:37 | 展覧会

David Lynch展@ヒカリエ 開催の裏側!!

今日は展覧会開催の裏側のお話をしたいと思います。
その中でもリンチさんの作品に使われている紙のお話。
書いていたらとっても長くなってしまったので、2,3回に分けてお話ししたいと思います。
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photo:ギャラリーItem Editions@Parisでの展示風景

リンチさんが初めて来られたのは今から5年前、2007年のことでした。
その時の感動をこう語ってくださっています。

"私はこの素晴らしい場所に足を踏み入れ、そして彼らのお陰でここでの制作の機会を得ることができた。全てがまるで夢のよう。そして新しいリトグラフという世界と石版のマジックに足を踏み入れたのである。(Idemサイトより引用)"

それも、それまで一度もリトグラフを作ったことなかったリンチさんにオーナーが

"やってみる?"

と言ったのが始まり。
これがその初めてリンチさんが石版に触ったときの作品です。
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photo:« Insect and Woman »,2007 courtesy Item Editions

それからの作品は既に150点を超えています。
それは私がここに入る前の話ですが、何のご縁なのか一作目からリンチさんは日本の和紙に作品をプリントされています。

『David LYNCH×和紙』

なんて想像出来ますか?
私は出来ません。
でもそれらがなんともしっくり、本当に新たな美しさを生み出したのです。
それがこのリトグラフのシリーズ。
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photo:4月にプリントされたばかりの2012年シリーズ,courtesy Item Editions

"どうしてDavid LYNCHに和紙なの?"

オーナーに尋ねてみました。
聞かせてくれたのは何とも不思議なご縁の話。


彼がこの工房を受け継いだのは1997年のこと。
その時彼は会社も、仕事も、プレス機も、石版も、職人も、技術もぜーんぶ受け継ぎました。
そこらへんに置いてある材料もストックも、いつからあるか分からないいたずら書きも、ここに住むネズミたちまで(!)、前オーナーのムルローさんが置いていったものは全部。
そしてその中にあったのが65.5 x 49.5 cmの手漉き和紙でした。
偶然にも。

実はリトグラフに和紙を使うことは過去にもいくつも例があります。
過去にもこんな作品たちが作られていますし、水彩絵の具や墨と違ってリトグラフのインクは紙にあまりしみ込んでいかないため発色もいいのです。
そして和紙と言うと高級で繊細、品のいいイメージもあり、ヨーロッパの方からしてもとっても美しい紙。
好んで使う作家さんも少なくありません。
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photo:Jean-Michel ALBEROLA, « Iablonoi », 1992,courtesy Item Editions, 和紙にリトグラフプリント

そんなこんなで、ぽつり、と長い間眠っていた和紙にスポットが当たりました。
いつもオーナーが"偶然ではないよ"というけれど、今思うとそれは本当に偶然じゃなかったんだろうなぁ。
だってここに日本人の私が勤めることになり、そのリトグラフたちが初めてアジアを旅するのが日本で…。

6月27日から渋谷ヒカリエ8階、小山登美夫さんのギャラリーでこのリトグラフたちを含む展覧会が始まります。
作品たちはちゃーんと飛行機にみんなで並んで乗って、日本に到着しました。
もともと日本で生まれた紙たち。
今頃は故郷の湿気具合に

"そういえばこんなだったー!!"

と私と同じようにびっくりしていることだと思います。
そんなふうに想像すると愛着がどんどん湧いてきます。
ほんとかわいい大事な仲間たちです。
会期は7月23日まで。
ぜひ足を運んでみてください。

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photo:工房にて、制作風景

お話はまた明日に続きます...
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by idemparis | 2012-06-21 01:58 | 展覧会

エルメス×杉本博司展@アートバーゼル

先週末は世界最大のアートフェアー、"Art Basel"に行ってきました!!!
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photo:メイン会場正面

私は今年で三度目ですが、本当に刺激的で感動的な幸せ空間です。
膨大な量が世界中から集まり、見応えバツグンのこの会場はパラダイス!
パリに戻ってきた今も

"はぁ〜♡"

と酔いしれてしまうほどに。

作品、作家、ギャラリー、コレクター、キュレーターや学芸員、評論家と、小さな美しい町バーゼルに集います。
規模は年々拡大し、本家のアートバーゼルから若手ギャラリーや作家に注目するサテライトのフェアー、美術館も合わせて展覧会をオープンさせたりと街全体がショー会場になります。

アートバーゼルについて書くには、余りに情報量が多すぎてまだ頭を整理出来ていないので、とりあえず小さな展覧会から紹介してみます。

"Hermès collaborate with Hiroshi Sugimoto"

会場は、古い建物にヘルツォーク&ド・ムーロンがリノベーションを施した、建築を見に行くにも興味深いMuseum der Kulturen
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photo:美術館の外観(二枚目の写真の上部分がヘルツォーク増築部分)

本来はここは"民族"というものをテーマに掘り下げて紹介する美術館らしく、儀式に使われた装飾品やそれらにちなんだ作品が飾ってありました。
その二階のスペースがこの企画の展覧会場。

民族がテーマの土や石を素材とした作品を通り抜けた先に、まるで正反対の真っ白で無機質な空間が現れます。
そこに展示されているのが杉本博司さんの作品をモチーフとしたエルメスのスカーフ、
"カレ(Carré)"。
会場は撮影可能とのことです。

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photo:会場風景

真ん中にはクリスタルのオベリスクが立っているのですが、もともとオベリスクは太陽ととても深い関係にあります。
たとえば、出来る影が日時計の役割を果たしていたり、先が四角錐になっていて太陽の光を一身に受ける存在として崇められたり。
エジプトで古くに作られ、オベリスクは太陽神を象徴するもの。
もちろん制作されて時代背景や文化もあってか、本来は殆どが石で作られています。
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それがクリスタルで作られるとどうなるのか。
本来、上部を金属で作って太陽光を集めて反射することで神を象徴するものとされていたものが、クリスタルだと光が通った時に乱反射を起こしてしまうんです。
プリズムってやつです。
ほら。
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こうやって光の屈折や乱反射が起こります。
光を集め、乱反射させて分散したり錯覚を起こさせたりします。

"この世の何が正しいのか、太陽の光すら乱反射している"

と、美しい見た目とは裏腹に、まるで難問を問いかけているようです。

オベリスクの意味や歴史を、"写真家(光を切り取る作業が作品となる)"が拾い、再構築する。
写真家の作品だからこそ、という面白さがここにあると思います。

とりあえず見るだけでもキレイなものなので、機会があればぜひ見てほしい展覧会の一つ。
しかもエルメスですから、ただファッションとして興味を持つのもいいと思います。
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photo:スカーフとしても飾ってあります。

きれいだー...

この企画のもう一つの見応えは、こうやって最上級のクオリティを追求し信念を持つ人たちが一緒にものを作ることで、また新たなものが生まれるってところ。
売ること、宣伝を目的としたコラボレーションも多々ありますが、これは間違いなくそれとは一線を画したもの。
結局、欲しいな〜(買えないけど)なんて思ってる自分はいるんですが、手に取らずとも見ているだけで美しいって言えるこの作品。
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ちなみにですね、ギャラリー小柳さんを始め、アートバーゼル内では各所で杉本さんの作品を目にしました。
この会場に飾られるってことだけで、とても難しく名誉とも言えること。
杉本さんの世界での評価の大きさを物語っています。
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photo:隣の作品はアレクサンダー・カルダー

エルメスとコラボをした作品もありました。
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この作品は40万ドルで売れたとか!
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photo:ギャラリー小柳@Art Basel

"すごー。"

って、かんじですね。

それにしても、日本文化が受け継いできた美意識を背景に制作する、杉本博司さんのような作家さんが、こうやって世界で評価されていることは、同じ文化を共有する日本人としてはとても嬉しいなーと思います。


と、なんだか日本が恋しくなってきたところで。

日本は台風が東日本を横断中とのこと。
どうぞお気をつけてください。


続く...
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by idemparis | 2012-06-20 01:59 | 展覧会

David LYNCH展 in Japan!!

今日は朗報。
日本での情報で既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ついについに日本でのDavid LYNCHさんのリトグラフを含む展覧会が開催されることとなりました。

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courtesy Item Editions
わーいわーいわーい。

すごーくすごーくものすごーく嬉しいです。
数年前からいつか日本で見せることができればと考えていました。
一年ちょっと前から動き始めました。
でもなかなかすんなりはいかず。
それをやっと叶えられます。
というか、叶えてくれます、あの小山登美夫さんが。

開催期間は6月27日から7月23日。
場所は先月オープンしたばかりの渋谷ヒカリエ8階、小山登美夫ギャラリーです。

今回発表される作品は日本はもちろん、アジアでも一度も発表されたことがないものばかり。
フランスを始めヨーロッパでとても人気のシリーズです。
特に2012年の最新作は先月リンチさんが来られた際に作られたもので、ここ以外ではまだパリですら発表されたことのないもの。
完全未発表作品です。
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photo:工房にて、製作中のリンチさん

それら新作が間に合うかも分からなかったし、日本がその作品初お披露目の場になるなんて考えていませんでした。
選んでくださった小山さんには本当に感謝ですし、それよりもさすがの目の付けどころと言いますか、本当にすごい方だと改めて思います。

それらリトグラフに加え、オリジナル作品も多数展示される予定です。
リンチさんは映画監督として有名ですが、学生時代から画家になりたくてずーっと絵を描き続けていました。
2007年にパリのカルティエ財団がアーティストとしての作品を一挙に公開してからは、作家としての才能を大きく評価されて世界各国で発表されることとなりました。
彼の頭の中にある世界が映画や音楽、写真や絵画を通して外に出てきます。
私達はその世界のほんの一部を彼の作品から覗くことができます。
だから、デヴィッド・リンチの世界観のファンの方にはぜひとも見てほしい。

少し前までギャラリーにこんな作品がありました。

前にもお話ししましたが、これは彫刻作品。
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私はこの靴をリンチさんの世界のシンデレラが落としていった片方だと思っています。

リンチさんが描いたキャンバス生地でクリスチャンルブタンさんが作ったもの。
ちゃんと真っ赤な靴底です。

今これはパリのサンジェルマンデプレ界隈にあるルテシア(Hotel Lutetia)というホテルに飾ってあります。
ルテシアにはDavid Lynchスイートルームなるものがあり、ここはリンチさんの作品で溢れています。
YouTubeにも公式の動画がUPされていました。



今回渋谷ヒカリエで発表される作品は、この彫刻こそないもののこのシリーズも含んでいます。そして2007年から2009年のリトグラフ作品を全て掲載しているカタログも数量限定で置かれる予定です。
ぜひぜひ足を伸ばして見に行ってほしい展覧会。

この工房から生まれた、私の大好きな作品たちを日本で見てほしいです。
私も、この展覧会の最終日には間に合うように日本に帰る予定です。
結構わくわくしています。
いつもここで見ている作品たちだけど、パリとは違う渋谷の喧噪の中で見る作品たちはまた違ったように見えると思います。

いつもこのブログで小さい写真しか見せれないけれど、やっと実物を日本にお届け。
私の大好きな石版の表情も見てほしいです。
リンチさんの作品が好きじゃない方も、作品が分からないくらいに思いっきり近寄ってこの石版のテクスチャーを見てみてください!

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photo:石版に描かれた作品。(印刷前)

もしタイミングが合えば、最終日辺りに会場でお会いしましょう。


渋谷ヒカリエ小山登美夫ギャラリー
http://www.hikarie8.com/artgallery/2012/04/post-1.shtml
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by idemparis | 2012-06-01 02:32 | 展覧会

David Douglas Duncan - ピカソの証人 -

今日のブログはいつもと違う書き方をしようと思います。

今日は2月23日。
今は午後8時25分。
セーヌ川沿いでノートルダム寺院とエッフェル塔を見ながら書いています。

どうしてって、、、
たった今とても素敵な出会いをしてきたからです。
そしてそれは、きっともう再会することのない人との出会いでした。
この今の想いを伝えたくて、今ここでブログを書いています。


彼の名前はDavid Douglas Duncan。
もともと戦場カメラマンとして名を馳せていた彼。
そしてピカソに唯一近づくことを許されたカメラマンであり、ピカソを追って写真を撮り続けたことで有名です。
そして今日は彼の写真の展覧会のオープニングでした。

家とは逆方向の展示会場であるギャラリーBasia Embiricosに、時差ぼけと疲れの残る身体は行くことを拒否。
でも、ピカソと共に人生を歩んできた人に会いたくて身体を頭が説得。
どうにか辿り着いた場所。
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photo:Basia Embiricosギャラリー

御年96歳。
ピカソよりも35才若かったことになります。
彼はピカソの情熱と、まさに天性の才能をカメラに収め続けました。
e0246645_23321553.jpge0246645_23323414.jpgphoto:© David Douglas Duncan 2012 © Succession Picasso 2012

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photo:展覧会様子
この日は分厚い図録の発売記念も兼ね、多くの人がサインを求め買った本を手に彼の元に集まっていました。
私も展覧会の素敵さについつい購入。
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せっかくだしなーと思いながら私もサインを求めて彼の元へ行きました。

一人一人に丁寧にサインをするDavidさん。
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"あれは書道だね"と周りがいうほど集中して描かれ、既にお疲れのようでした。
少しイライラもされているよう。
"あと一人"と言われ半ばあきらめました。

いいの。だってサインをもらいにきたんじゃないもの。

と、、、思ったらその瞬間目が合い、彼が"ニヤッ"としました。
私はつられて"にこーっ"と。
その瞬間、指で”その本を貸しなさい"と合図するDavidさん。
ほんの数秒前まであきらめていた私は、まるでこうなることが分かっていたかのような気持ちになっていました。
彼は私の名前を尋ねると、"AKIKOという名前なのか!"と少し驚き、それまでのしかめっ面が何だか笑顔。
その驚きがなんだったのかは分からないけど、終始笑顔でサインをするDavidさんを見ながら私もずーっとニコニコしていました。

彼がサインを書いてくれている間、ずーっとわくわくしていたのは、握手をするのが楽しみだったから。
不思議なことにサインの後誰も彼に握手を求めないんですね。
Davidさんが少しお疲れだったからかな。
でも私は笑顔で握手をすると、彼と目が合った瞬間から決めていました。

これまでに、何回ピカソと握手をして、何度ピカソの肩を抱いただろう。
ピカソが亡くなった1973年4月8日、もし彼が泣いたのならきっとこの手がその涙をぬぐったのだと思います。
私はその手と握手がしたかったんです。

こんなことを言ったら、毎日私を迎えてくれる工房のプレス機たちに怒られてしまうかもしれないけど、ここでは当時の人の温度だけは触れることができません。
たくさんの歴史も、たくさんのパワーも想いも、今の人たちのとびきりの笑顔やたくさんのぬくもりはあるけれど、当時の人たちのぬくもりだけがここには足りません。
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photo:たくさんのピカソの作品を生んだプレス機と、石版たち

昔を繋ぐ今を、未来へと繋ぎたい。
この一年、たくさんのこと、ものを見て、たくさんのもの、人に触れてきました。
でも今日、Davidさんと握手をしたことで、過去の人の温かさもちゃんと受け取り、次に繋げられると感じました。

Davidさんの手は柔らかくて大きくて、とっても温かい手でした。
彼がこれまで手をつないできた多くの人たちと、私も手をつないだような気がしました。
そして彼は、"最後の一人"を撤回し、また次のサインを始めました。
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そして私はギャラリーをあとにしました。
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photo:ギャラリーのある通り

出会った人たちとはもう一度会いたい。
何度再会しても、また会いたい。
常にそう思っています。
でも今日初めて、再会を求めない、というよりも彼と共有する最初で最後のこのたった1、2分の間に、ありったけの気持ちを込めることの出来た、そんな出会いをしました。

たった今感じたこの想いをすぐに伝えたくて、今日はこんな場所で書いてみました。
こんな素敵な出会いがある。
やっぱりパリは、私にとってキラキラ輝く宝箱なんだなぁと改めて思いました。

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photo: この記事を書いた時のセーヌ川
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by idemparis | 2012-02-25 00:04 | 展覧会