パリのリトグラフ工房IDEM(イデム)。

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カテゴリ:リトグラフ( 2 )

サヴィニャックの思い出。

一度、サヴィニャックのリトグラフについて書きました

この時は、色が美しく大好きな一枚としてここで紹介したのですが、そういえばどうしてサヴィニャックの作品をここで作ることになったんだろうなと思い、聞いてみました。
語ってくれたお話は、この場所が積み上げてきた歴史が生み出した物語でした。

ここのオーナー、フォレスト
真っ青な瞳の持ち主です。
その透明なブルーの瞳は人より多くのことが見えてるんじゃないかと、私は密かに思っています。

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photo:たくさんの日が差す今日のidemの様子

彼がこの場所を受け継いだのは1997年のこと。
それからしばらくしてここで働いていたという年をとった職人、イヴ・メルシェルに出会いました。
その職人はは言いました。

「自分の父親もまた、リトグラフの職人だったんだ。カッサンドルやサヴィニャックは父が手がけたんだよ。」

そしてこう続けます。

「そしてその中のサヴィニャックの一枚は自分が手がけたんだ。」

フォレストは驚いたと言います。
いつの話だろう。そんなことってありえる??
そう思ったのだそう。

その昔、この職人さんがまだまだ今の私のように新入りだった頃、きっと眉間に皺が刻まれた父を師匠として一生懸命手がけたんだと思います。
それが1949年のこと、この一枚でした。

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作品:Mon Savon au lait (モンサヴォン・オ・レ)

フォレストはその話をすぐにサヴィニャック本人に伝えました。

"その作品からちょうど50年。それを祝って再版しましょう。"

というとっておきのアイディアも付け加えて。
とっても喜んでくれたサヴィニャックご本人とともに、それから2004年までの間に5枚のリトグラフが再版されました。

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作品:La Corse A Corté, 2002
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作品:Téfal, 2004
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作品:MonSavon, 2000
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作品:Seb Régale Vite, 2003


サヴィニャックの作品を作るきっかけとなったMon Savon au Laitの裏にはこう書かれています。

「Yves Melcherの携わった1949年から50周年を祝っての再版」

1949年から半世紀、1999年のことでした。


これに加えて、もう一枚作られたリトグラフがあります。
それがこれ、オランジーナ。

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作品:Orangina mieiux qu'un soda

これも他の作品と同じように裏に説明が書いてあります。

"1964年の試し刷りを経ての初版"

当時、リトグラフでの試し刷りは作られながらも、何かしらの理由で印刷されなかったサヴィニャックの代表作の一つ、オランジーナ。

数十年の時を経て、初めて印刷されることとなりました。
現在も世界中で親しまれているオランジーナ、このことを問い合わせたらとっても喜んでこの初めての印刷を賛成してくれたそうです。



ここがずっと動き続けてるから生まれる物語。
ここがずっとここにあるから生まれたリトグラフ。
このオランジーナはもう残り数枚。
そう思うと少し淋しくもあります。

色んな人たちの想いや人生がたくさん詰まったこれらの作品。
大切な人へのプレゼントに、いつかしようと思っています。
でもまずは自分へのご褒美に青とピンクのモンサヴォン。
毎日お家に帰るとき、このぽにっとした顔が出迎えてくれると思うとほっこりします。



この話を聞いてまたもう少し、この場所が好きになりました。
作品について、工房について、どうぞいつでもご質問下さい。

akiko.otsu@idemparis.com
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by idemparis | 2013-04-04 22:43 | リトグラフ

リトグラフ物語2

お待たせしました!
やーーーっとリトグラフとは何ぞや、というものを語っていこうと思います。
リトグラフ物語1の続き。
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そもそもリトグラフとは版画の一種です。
版画は主に凸版、凹版、平版、孔版の四つに分かれます。

凸版は木版画に代表され、凸部分にインクが付くもの。
単純に言うと木版の"彫ってないところにインクが付き印刷”され、彫ったところが白く残ります。
余談ですが、木版画と言えば浮世絵。
この間の森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ)の歌川国芳展は溜息が出るほど感動しました。
photo:
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歌川国芳展より引用

で、それと逆の技法が凹版。
エッチング(銅版画)に代表されますが、"彫ったところにインクが入り印刷"されます。
それぞれに複雑な細かい技術はありますが、私は詳しくないので説明は省きます…。
ここまでは物理的な原理なので想像もしやすいと思います。

だからなのか、しょっちゅう質問をされるのが、

"石版をどうやって彫るんですか?!"

です。
固いし重いし希少だし。
石版を彫るってどうやってやるのか不思議ですよね。

ここで出て来るのが"平版"です。
"平版"。
つまりここに凹凸はないのです!
ここでは"化学"的な原理が現れます。
それが"油と水の反発性"。
平版=リトグラフとはを"油と水の反発性を利用したもの"なのです。
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photo:準備されてる石版さん

近からず遠からずなんですが、想像しやすいように一例を。
子供の頃、図画工作で絵を描いた時にクレヨンで描いた部分に水彩絵の具が乗らず、はじかれていたような記憶はありませんか?
その弾き合う原理を使っています。

石版の上に描く描かないで親油性と親水性の部分が生まれます。

石版の上に描いた部分→親油性=油性のインクが乗る
石版の上に描いていない部分→親水性=水が乗る=油性のインクを弾く

です。
それさえ分かってもらえればここからは写真でだ〜っとお見せしようと思います。
まず、出番を待つ石版たち。
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か、かわいい...。

工程1:石版を用意
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photo:すべっすべ。絵を描くために磨かれています。

備考1:石版に描く道具
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備考2:トゥーシェと呼ばれる石版に描く専用のインク(墨のようなもの)
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工程2:石版に描く
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石版に描くと石版の表面にある穴(ミクロ単位)に油性分のインクが浸透していきます。
このミクロ穴の集合体が繊細な表現を生み出します。

工程3:職人が技術を施すことで親油性部分と親水性部分が石の表面に定着
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工程4:プレス機に設置
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工程5:描いたインクを取り除く(透明に絵が見える!)
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工程6:試し刷り〜本刷り
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で、印刷後の石版はまた表面を磨くと再利用出来ます。
こんな感じ。
e0246645_225148.jpge0246645_235939.jpgphoto:機械で(左)、手作業で(右)磨きます。

だからほら、リンチさんお気に入りの石はシリーズに何度も現れます。
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作品:"I Fix My Head", David Lynch, 2010年,courtesy Item Editions
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作品:"System Over City", David Lynch, 2010年, courtesy Item Editions
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作品:"Flower", David Lynch, 2011年, courtesy Item Editions

実際はこんな感じ。
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かなりかわいいです。
これは特に個性の強い石版なので、現在はリンチさん専用となっています。

ピカソやマチスが制作していた工房...。
もしかしたら彼らが使っていた石かも知れません。
そう思うと不思議...。
数十年前、彼らがこの石版の前に立ち、絵を描いていたわけですから。
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photo:石版の前にて、マチス(左)と前オーナーのフェルナン・ムルローさん(右)、ここより引用。

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photo:当時と変わらない今日の石版たち


でも...
難しい!
すごく難しい!!
文章での説明ってものすごく難しい!!!
なんとなく分かって頂けましたか?
全然伝わらないような気がして不安です...。

どうして今までリトグラフの工程について書かなかった(逃げていた)か、今回分かりました。
説明って、人の感情とかが必要ないんですね。
どーうも義務的になってしまいます。
自分じゃないみたい。
授業みたい。
つまらない。

ここにはたくさんの技術や歴史が詰まっていますが、一番詰まっているのは人の想いや、ここの道具たちが時を重ねて得てきた温かみです。
それが積み重なったのが技術や歴史。
本当はここの温かさ抜きに説明なんて出来ないんです。
だから興味を持ってくださる方にはやっぱり直接伝えたいです。
そしたらまるで演劇舞台の案内人のように愛情を込めて、ここの温かさや人の想いを伝えられるのに。
そしたらここはまるで19世紀。
芸術の都、パリが舞台のあなたが主役の物語です。
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文章でこの空気を届けるのは難しいけど、マイペースに伝えて頂ければと思います。
このつま〜らない前半の説明部分すら楽しく読んでもらえたのなら、次はここにも足を運んでほしいなと思います。

続く...。


追伸
先週からDavid LYNCHさんが来られています!
工房はひっきりなしに人が来て、春の訪れとともに賑わいも増しています。
少しばたばたとした日々が続きますが、この環境に日々幸せを感じているところです。
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photo:おとといプリントしたばかりの新作。もうすぐギャラリーにもお目見えします。
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by idemparis | 2012-03-30 02:59 | リトグラフ