人気ブログランキング | 話題のタグを見る


パリのリトグラフ工房IDEM(イデム)。

カテゴリ

idem
item editions
今日の出来事
展覧会
リトグラフ
作家/作品
アートとは
今日のリトグラフ
私の軌跡
コンタクト

以前の記事

2013年 06月
2013年 04月
2012年 10月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月

検索

その他のジャンル

最新の記事

ダリ / Salvador ..
at 2013-06-28 00:14
時代の節目、今日の出来事。
at 2013-04-17 01:05
IDEM PARIS by ..
at 2013-04-06 01:45
サヴィニャックの思い出。
at 2013-04-04 22:43
JUN INOUE 続き
at 2012-10-24 21:33

外部リンク

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧

David Douglas Duncan - ピカソの証人 -

今日のブログはいつもと違う書き方をしようと思います。

今日は2月23日。
今は午後8時25分。
セーヌ川沿いでノートルダム寺院とエッフェル塔を見ながら書いています。

どうしてって、、、
たった今とても素敵な出会いをしてきたからです。
そしてそれは、きっともう再会することのない人との出会いでした。
この今の想いを伝えたくて、今ここでブログを書いています。


彼の名前はDavid Douglas Duncan。
もともと戦場カメラマンとして名を馳せていた彼。
そしてピカソに唯一近づくことを許されたカメラマンであり、ピカソを追って写真を撮り続けたことで有名です。
そして今日は彼の写真の展覧会のオープニングでした。

家とは逆方向の展示会場であるギャラリーBasia Embiricosに、時差ぼけと疲れの残る身体は行くことを拒否。
でも、ピカソと共に人生を歩んできた人に会いたくて身体を頭が説得。
どうにか辿り着いた場所。
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_2326692.jpg

David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23264099.jpg
photo:Basia Embiricosギャラリー

御年96歳。
ピカソよりも35才若かったことになります。
彼はピカソの情熱と、まさに天性の才能をカメラに収め続けました。
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23321553.jpgDavid Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23323414.jpgphoto:© David Douglas Duncan 2012 © Succession Picasso 2012

David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23371543.jpg
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23373857.jpg
photo:展覧会様子
この日は分厚い図録の発売記念も兼ね、多くの人がサインを求め買った本を手に彼の元に集まっていました。
私も展覧会の素敵さについつい購入。
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23361311.jpg
せっかくだしなーと思いながら私もサインを求めて彼の元へ行きました。

一人一人に丁寧にサインをするDavidさん。
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23391425.jpg

"あれは書道だね"と周りがいうほど集中して描かれ、既にお疲れのようでした。
少しイライラもされているよう。
"あと一人"と言われ半ばあきらめました。

いいの。だってサインをもらいにきたんじゃないもの。

と、、、思ったらその瞬間目が合い、彼が"ニヤッ"としました。
私はつられて"にこーっ"と。
その瞬間、指で”その本を貸しなさい"と合図するDavidさん。
ほんの数秒前まであきらめていた私は、まるでこうなることが分かっていたかのような気持ちになっていました。
彼は私の名前を尋ねると、"AKIKOという名前なのか!"と少し驚き、それまでのしかめっ面が何だか笑顔。
その驚きがなんだったのかは分からないけど、終始笑顔でサインをするDavidさんを見ながら私もずーっとニコニコしていました。

彼がサインを書いてくれている間、ずーっとわくわくしていたのは、握手をするのが楽しみだったから。
不思議なことにサインの後誰も彼に握手を求めないんですね。
Davidさんが少しお疲れだったからかな。
でも私は笑顔で握手をすると、彼と目が合った瞬間から決めていました。

これまでに、何回ピカソと握手をして、何度ピカソの肩を抱いただろう。
ピカソが亡くなった1973年4月8日、もし彼が泣いたのならきっとこの手がその涙をぬぐったのだと思います。
私はその手と握手がしたかったんです。

こんなことを言ったら、毎日私を迎えてくれる工房のプレス機たちに怒られてしまうかもしれないけど、ここでは当時の人の温度だけは触れることができません。
たくさんの歴史も、たくさんのパワーも想いも、今の人たちのとびきりの笑顔やたくさんのぬくもりはあるけれど、当時の人たちのぬくもりだけがここには足りません。
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23494688.jpg
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23505786.jpg
photo:たくさんのピカソの作品を生んだプレス機と、石版たち

昔を繋ぐ今を、未来へと繋ぎたい。
この一年、たくさんのこと、ものを見て、たくさんのもの、人に触れてきました。
でも今日、Davidさんと握手をしたことで、過去の人の温かさもちゃんと受け取り、次に繋げられると感じました。

Davidさんの手は柔らかくて大きくて、とっても温かい手でした。
彼がこれまで手をつないできた多くの人たちと、私も手をつないだような気がしました。
そして彼は、"最後の一人"を撤回し、また次のサインを始めました。
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_23554455.jpg
そして私はギャラリーをあとにしました。
David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_01294.jpg
photo:ギャラリーのある通り

出会った人たちとはもう一度会いたい。
何度再会しても、また会いたい。
常にそう思っています。
でも今日初めて、再会を求めない、というよりも彼と共有する最初で最後のこのたった1、2分の間に、ありったけの気持ちを込めることの出来た、そんな出会いをしました。

たった今感じたこの想いをすぐに伝えたくて、今日はこんな場所で書いてみました。
こんな素敵な出会いがある。
やっぱりパリは、私にとってキラキラ輝く宝箱なんだなぁと改めて思いました。

David Douglas Duncan - ピカソの証人 -_e0246645_013968.jpg
photo: この記事を書いた時のセーヌ川
# by idemparis | 2012-02-25 00:04 | 展覧会

日本より帰ってきました。

お久しぶりです。

パリに戻ってきました。
日本出張、たくさんいいことがあり、本当によかったです。
とはいえ、なんであんなに忙しかったんだろう。
東京に居た10日間が一ヶ月のように感じています。

二週間ぶりのパリは、寒波も去って寒くもないしとっても落ち着ける空間がここにはやっぱりありました。
二週間ぶりの私をとっても喜んで迎えてくれるここのみんながいて、製作中の作家さんも居て、帰ってきたなぁと感じました。

今日からは滞在中の出会いなども記事におりまぜながら、またブログを再開したいと思います。
日本より帰ってきました。_e0246645_0283262.jpg

写真はギャラリーの私がいつも座っている場所。
工房も大好きですが、こっちのギャラリーも大好きな場所です。
# by idemparis | 2012-02-22 00:29 | idem

idem物語7 -私の居場所-

もう何度も言っているんですが、私、ここが大好きなんです。
本当に今の生活の中心となっている場所。

パリに来る前から知っていた今のオーナーを尋ねて8年くらい前からちょくちょく来ていたこの場所。
数ヶ月ぶりにここに足を運んでもいつもと変わらずここは私を迎えてくれていました。
日本に帰っても、ここに戻ってくると"あ〜戻ってきたなぁ"と毎回思います。
自分のお家じゃなくてここ。
ドアをくぐってこの風景を見るとほっとします。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_2421485.jpg

インクの匂いとこの空間が私のパリの居場所です。

今は毎日みんなに"Bonjour!"と挨拶したらまずここへ。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_2465859.jpg

定位置についた私の視界はこんな感じ。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_2473127.jpg


夏は光が入り込み、雨が降ると音が聞こえます。
私の背中にはいつもピカソの版画(1962年印刷)とレイモンド・ペティボン(2005年印刷)が並び、いなくなったら淋しくてしょうがなくなるほど、私と彼らはいつも一緒にここにいる同僚みたいなものです。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_253813.jpg


ある日いつものようにここに来たら、入り口にこんなのが貼られてました。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_314536.jpg

これはもちろん彼↓の仕業。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_335058.jpg

不思議。
名前が貼られると、自分の居場所が確立される。

この工房で、私はねずみちゃんとかハムスターとかパピヨン(蝶々)と呼ばれています。
自由にマイペースに動いてまわるから。
時々、エンジェルと呼んでくれるのはとりあえず"にこにこ"笑顔だけは欠かさないからでしょうか。

100年以上変わらずここにあるこの工房は、毎日色んな表情の変化を見せます。
職人さんが色を作って、
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_3135182.jpg

それがプレス機に乗っかって、
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_3152789.jpg

印刷が終わる度にお掃除されます。
その度にぽたぽたこぼれるインクはプレス機の底もお粧し。
ほら。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_3164027.jpg


色んな作家さん、作品が歴史となって積み重なると、こうなります。
ほら。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_3202266.jpg

そしてそして!
私がこの工房の中で一番一番大好きな場所。
それがここです。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_324493.jpg

何だか分かりますか?
これ、インクのつらら。
一色ずつしか印刷出来ないリトグラフは、その色の数だけプリントされます。
色を作って、プリントして、キレイに掃除されて。
キレイにされるとき、ぽたぽたとインクが少しこぼれおちます。
それがつららになったもの。

一体いくつの色が重ねられたらこうなるのだろう。

あ、せっかくなのでアップでも見てください。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_3294863.jpg


大好きです。
ここ、ほんと。
歴史が詰まったここで、もっとも歴史の積み重なりを感じるところ。

明日からしばしお別れ。
日本に出張です。
また色んな出会いがあって、その人たちがこの場所に足を運んでくれたらいいなぁと思います。
彼らの作品や想いは、また世界中に広がっていく。

ここはそんな場所です。
二週間後、また戻ってきたとき変わらずインクの匂いと心地いい音、また二週間分歴史を積み重ねたここが私を迎えてくれます。

にこにこしているのは私だけど、にこにこさせてくれているのはこの場所とここにいるみんなです。
idem物語7 -私の居場所-_e0246645_3414150.jpg

# by idemparis | 2012-02-04 03:42 | idem

idem物語7 -音-

今日はここの音を聴いてほしくて...

100才を越えたリトグラフのプレス機たち。
100年間殆ど休むことなく動いてきました。
世界中の仲間たちが少しずつ引退していく今日もまた、ここのプレス機たちは動き続けています。

見た目は重工なプレス機。
鉄で出来ています。
でも、100年動き続けたこの機械の音...。
角が取れて丸くなって、優しい温かい音を生むようになりました。
そんなところが少し、人と似ている気がします。

100年以上動き続けた金属の音って、なかなか聴けるものじゃないんじゃないかと思います。
ここは毎日この音。
仕事中の私のBGMです。

この心地のいい音、是非一度聴いてみてください。


# by idemparis | 2012-01-30 19:05 | idem

今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)

世界でここだけの宝物。

この作品は絶対に写真じゃ伝わらないよさなので、載せるか迷いに迷いました。
でも、現物がどれだけ素敵か見にきてほしくて、書いてみようと思います。
だから写真じゃ100分の一以下しか伝えられないー!って想い、どうか汲んでお読みください。

今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_327597.jpg


タイトル:Untitled 17, (Ravine, Penis Gun, Yellow)
制作年:2009年
サイズ: 119 x 78cm
版数: 30ex
価格: 4400ユーロ

"超"売れっ子現代アーティスト、Paul McCarthy。
よくポール・マッカートニー(Beatls)さんと間違えられびっくりされますが、ポール・マッカーシー(仏語だとマッカーティー)と読みます。

彼の映像作品を初めて見た時、私は全身で拒否しました。笑
そして数年間彼の作品を拒否し続けてきました。
それを覆してくれたのがこれらリトグラフの美しさです。
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_3295123.jpg
         タイトル:Untitled 18, (Ravine, Hairpull Dress, Yellow)

見る人をぐっと惹き付けるような黄色。
その視線を掴んで離さない強い黒。
いつ見ても、何度見ても見飽きない。
彼にしか生み出せない美しく力強いクリエーションがここにあります。

ITEM Editionsは2010年のArt Basel(アートの聖地とも言われる世界最大のアートフェアー)に参加した際、メインにこの作品を持ってきました。

ほらこんな感じ。
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_3311997.jpg

するとほら、人だかり。
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_3364346.jpg

写真では伝えられないこのすごさ。
ギャラリーで実物を見た人は驚きます。
ご本人も会場に来てくださり、大変喜んでくださいました。
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_33715100.jpg
photo:Paul McCarthyさんの後ろ姿
写真まで撮ってくださって。
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_338154.jpg

他のギャラリーにも彼の作品がありましたが、実はこの彫刻1体60万ユーロ。

今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_411918.jpg今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_422883.jpg
photo:彫刻作品
それが初日に5体同時に売れました。
60万×5で300万ユーロ。
当時だと3億5千万円くらい…。
ほんと、目が点ってこういう時に使いますね。
次の日の新聞に載ったほど、その日一番のニュースでした。

マッカーシーさんは彼にしか表現出来ない独特の世界観を持っています。
こんなのもありますが、
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_3541455.jpg今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_3552948.jpgphoto:ここより引用

こんなのも〜!
...ってのが見たい方は画像や動画を検索してみてください。
リンク貼るだけで法に触れそうなので、ここに載せるのはやめておきます...。
久しぶりに彼の動画作品を見ましたが、やっぱりダメだ...。
心臓の悪い方、お食事中の方、いい夢見ながら寝たい方は見ないことをお勧めします...。

あまりの過激さに話しがずれてしまいましたが、ポルノでなく、フィクション小説でなく、"アート"としてこの世界観を具現化し、それをよしとさせるのは彼をおいて他にいないんじゃないかと思います。
それはいちアーティストとしてすごいこと。

実はマッカーシーさんの版画は世界にここだけしかありません。
この場所を大変気に入ってくださったマッカーシーさんは、長いキャリアの中で一度も作ったことない版画を制作されました。
それがこれや、
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_482628.jpg

            タイトル:Untitled 10 (Saloon, Boot Drinking)
これ。
今日のリトグラフ:Paul McCarthy (ポール・マッカシー)_e0246645_359914.jpg
            タイトル:Untitled 15, (Pirate Boat)

美術館やアートフェアーで眺めることしか出来ない彼の世界観がここだと手に入ってしまいます。
"こ"金持ちになったら、これを一番最初に買いたいです。
まだ手の届かない、私の一番欲しいもの。


世界でここだけの宝物。
よかったら見に来てみてください。
# by idemparis | 2012-01-30 18:53 | 今日のリトグラフ